2013年12月20日金曜日

会陰ヘルニア Ⅱ


 みなさん会陰ヘルニアという病気をご存じでしょうか?
会陰部、つまり、おしりの周りの筋肉が緩んできたためにできた穴(ヘルニア孔)から腸や膀胱が脱出してしまう病気です。
 未去勢の雄犬に多い病気でホルモンに関連して起こるとも、遺伝性に起こるとも言われていますが発生原因自体はいまだ確定されていません。

 会陰ヘルニアになると、穴から飛び出したものにより肛門のまわりが膨らみます。腸が飛び出した場合には、便秘や排便困難が見られるようになります。まれに膀胱が飛び出した場合には、膀胱が反転するためおしっこができなくなり、場合によっては死んでしまいます。
 会陰ヘルニアは自然治癒する事は有りません。姑息的に便を柔らかくするお薬を飲む事により便秘を一時的に解消もしくは緩和させる事はできてもそのままにしておくと病態は進行していきます。そのため、会陰ヘルニアの第一選択の治療法は外科的手術によるヘルニア整復術となります。
手術方法は周りの筋肉を使って穴をふさぐ方法やポリプロピレンメッシュやシリコンプレートなどの道具をつかって穴をふさぐ方法があります。
 会陰ヘルニアは再発率が30%近くもある病気です。しかし当院では麻布大学の渡辺先生が考案した、プロリンメッシュを使う方法で手術を行い、現在までどの子も再発もなく良好な成績を収めています。
最近うんちがでにくい、お尻の周りが腫れているなどの症状はありませんか?その症状、会陰ヘルニアの可能性があります。
 少しでも気になることがありましたら是非一度当病院にご相談ください。

2013年11月21日木曜日

アレルギー皮膚炎


最近とても体を痒がっている。体が赤くなっている。そんな症状は見られていませんか?その症状アレルギーかもしれません。アレルギーとは、ダニ、カビなどの異物に対し免疫機能が過剰に反応してしまうために起こる病気です。ワンちゃんの皮膚病疾患のなかでもっとも多く見られるのが、アレルギー性皮膚疾患です。そのアレルギー性皮膚疾患のひとつであるアトピー性皮膚炎は、アレルギー性皮膚疾患のなかで非常に大きな割合を占めています。

アトピー性皮膚炎は遺伝的な体質が大きな要因でありその体質を完全に治すのは困難です。しかし、病院での治療のほか、部屋を清潔にしてアレルギーを起こす物質を減らしてあげる。こまめにシャンプーして皮膚のバリア機能を高めてあげる食事内容を見直すなど、生活環境を改善すれば、症状を軽減させ生活の質を高めてあげることができます。アトピー性皮膚炎は若い時期に発症し、長期の管理が必要な、愛犬と飼い主様を悩ませる皮膚炎です。そのため、治療するにあたり飼い主様の理解と協力がとても重要です。当院では様々な最新の情報を元に、飼い主様が一番納得できる治療や管理方法をご提案いたします。最先端の治療を行っている大学病院の紹介もおこなっていますので皮膚のことでお悩みの際はぜひ一度ご相談ください。 

2013年10月26日土曜日

骨髄検査

骨髄の検査について

骨髄とは骨の中にある血液を作る場所です。骨髄検査は主に他の検査では解決できない血液の異常を見つけるために重要な検査です。また、血液中に異常が認められない場合でも骨髄に病変の存在が疑われる腫瘍などが検査の適応となります。
手技自体は短時間の全身麻酔下で行うことが出来ます。
少し皮膚を切開したのち、専用の針を目的部位(太ももの骨や肩の骨)にあて骨髄を採取します。
骨髄検査をやる子の多くは貧血を起こしている場合が多いです。しかし、輸血や、きちんとした手技が行なわれれば合併症の危険は稀です。例え血が止まりにくい子であっても骨髄検査は行うことができます。骨髄検査によって得られる情報はとても貴重なものなので、必要だと思われる症例に対しては積極的に実施したいものです。


2013年10月12日土曜日

前足が曲がってきたら....


尺骨遠位成長板の軟骨芯遺残

先日、大学病院で診察した症例を紹介します。

これは成長期の大型犬・超大型犬に多い病気ですが、小型犬にも起こります。

尺骨遠位骨幹端部分の軟骨内骨化が遅れることで、肥大した軟骨細胞の遺残が起こります。(手首の付け根にある軟骨が硬い骨に置き換わらないとイメージしてください)

この遺残はレントゲン検査によって、キャンドルスティック状の軟骨芯として確認できます。


 







←キャンドルスティック状の
  軟骨芯










軟骨芯遺残のせいで、尺骨遠位の成長不良が起こります。

尺骨の成長不良のせいで腕の外側の骨が短いまま、内側の骨のみ成長して長くなるため、手根の外反変形(手首が外側に曲がって成長)を起こします。

成犬において骨格の変形による機能的問題、具体的には足を引きずる、体重をかけられないなどの症状が認められる場合には、矯正骨切り術をすることがあります。

 つまり、大人になって生活に支障が出るようなら、手術が必要ということです。

 このように、歩き方がおかしいときは、整形疾患を得意とする動物病院を受診することをおすすめします。